だから君に歌を
京平が千夏の肩を掴んだ瞬間、千夏は「いいかげんにしてよ!」と叫んでいた。

「何で無理矢理って決め付けるの!?いつまで、どこまで私のこと子供扱いするつもりよ!私は京平の思うような純粋無垢な妹なんかじゃない!」

いい加減、本当に嫌になる。
どこまで馬鹿なのか。

純粋すぎるのは罪だと思う。

この兄は昔から本当に、純粋で、汚しても汚れない潔癖な凜とした美しさを持ち合わせていた。

同じ親から生まれたはずなのになぜこうも違うのか。
なぜ千夏はこんなに汚いのか。

兄がいなければここまで千夏は自分を汚い存在だと思わずにすんだに違いない。

京平は茫然と千夏を見つめていた。

「あんたの妹は、どこの誰かもよく知らない男にでも簡単に抱かれるような汚い女なんだよ!」

京平とは似ても似つかない。

「千夏…」

「もう放っておいてよ…お願いだから」

千夏は立ち上がり、自室へと閉じこもった。
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