だから君に歌を
いつもは古い木のテーブルなのに、白いテーブルクロスが被せられ、

テーブルの両端に向かい合って椅子が二つ置かれていた。

「さ、座って座って」

京平はいそいそと椅子を引く。

千夏は驚いて何も言えないまま椅子に座ってテーブルの上を見回した。

中央のケーキには<HAPPY BIRTHDAYちなつ>とデコレーションが施され、
ケーキを囲むようにたくさんの料理が並べられていた。

「酒はだめだけど、気分だけでも」

京平はぼんやりとしている千夏の横に立ってグラスに炭酸の入ったジュースを注ぎ、
千夏の真正面に腰を下ろした。

京平はにっこりと微笑んでグラスを持ち上げ、
もう一度「おめでとう」と、今度は穏やかな声で言った。
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