だから君に歌を
綺麗になった。

千夏が歌い始めると観客達のテンションが最高潮に達し、
すごい盛り上がり。

そんな中、京平は一人だけ微動だにせずステージの上に立つ千夏を見上げていた。

まるで別人のようだった。

京平の妹であるのが信じられないくらいのオーラを放つ千夏は近寄れないくらい遠い存在に感じた。

気がつくと千夏は歌い終わってステージの袖に引っ込もうとしていた。

京平は慌てて叫ぶ。

「千夏っ!」

京平の声が聞こえているはずの千夏は振り返りもしない。

「千夏っ!おいっ!千夏ってば!」

客も帰り始めていた。

京平の必死の叫びも虚しく、千夏の姿は見えなくなった。
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