だから君に歌を
そんな千夏が目に見えて変わり出したのは中学に入ってからだった。

その頃から千夏はギターと歌に熱中し始め、
京平と話しをすることがどんどん少なくなっていった。

それでもまだ、
京平を嫌うとか、邪険にするとか、
そんな風ではなかった。

やはり決定的だったのは両親の死だった。

両親が死んでから千夏の態度は明らかに変わった。

まともに京平と顔を合わせなくなり、
高校に入って下宿をしてからは家に帰って来なくなった。

京平はそんな千夏を怪訝に思いながらも、
一方では両親が死んだ経緯を考えると仕方がないと納得し、

自分はただ、
両親の分まで千夏を一人前にしてやらなくてはいけないと必死になっていた。
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