だから君に歌を
京平達が乗った電車は都心からどんどん離れ、
郊外へと向かった。

千夏が降り立った駅ではもう酔う程の人混みはなくなっていた。

千夏は一度コンビニへと立ち寄ってカップラーメンとおにぎりを買うと、
そのまま歩き、
やがて古びたアパートの階段を上り始めた。

そこで京平はようやく身を隠すことをやめ、
階段を駆け登った。

カンカンと金属音を響かせ、一気に駆け上がり、
部屋の扉を開きかけていた千夏の腕を掴む。

「千夏っ!」

意外にも千夏は驚く事なくゆっくりと京平を振り返ると、
京平を部屋に入れた。

京平を中に入れ、カチャリと部屋の鍵を閉めると眉間にシワを寄せて京平を睨み付けた。
< 77 / 189 >

この作品をシェア

pagetop