だから君に歌を
京平ははっきりと言い切る千夏にそれ以上何も言えなかった。

言うべき言葉を見出だすことができなかった。

悔しい。

「京ちゃんおかえりー」

数日家を開けていた京平を、ホッとさせる笑顔で出迎えたのは千雪だった。

「ただいま。ちぃ」

京平は自分の足元に飛び付いてきた千雪を抱き上げ、ぎゅうっと抱きしめる。

千雪はけたけたと甲高い声を上げて喜んだ。

「ちぃ、ごめんな」

お前のお母さん、
連れて来れなかった。

情けない兄で、父で、
家族で、

ごめん。

千雪。

そして、千夏。
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