だから君に歌を
ピリリリリリ…

畳の床の上に敷いた布団の中で千夏はうるささに呻き声をあげた。

枕元でしつこく鳴り響く携帯電話を取るために腕だけを布団から出して、
手探りで携帯を見つけると、
携帯を耳に当てた。

「もしも、しぃ?」

意識はまだ半分夢の中。

<おーい、何やってんだー?練習の時間だぞ>

受話器から流れ出るのはバンド仲間の晶の声。

「…ああ、ごめん。寝てた」

<寝てた、っておい!CD発売も来月に控えてんのに暢気なもんだなー。どうしたよお前が。何かあった?>

「別に、何も」

<ならいーけど。ちゃんと来いよ!あと次の曲の歌詞、持って来いよな?>

「あー。うん、わかった」

<…一時間以内に来なかったらクビな>

「へーい」

どこまで本気でどこまで冗談かわからないようなやり取りを交わして千夏は電話を切った。
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