だから君に歌を
千夏は千雪を産んだ後、退院するなり直ぐさま家を出た。
まだまだ母乳を必要とする、母が守らなければならない小さな命を、
千夏は京平に押し付ける形で島を去った。
目的はただ一つ。
楽器店のショーウインドーに貼られていたオーディションだった。
千夏には歌しか武器にできるものがなかった。
京平から離れて後に残るのは歌だけ。
けれどオーディションは一次を通過したものの、
二次で呆気なく落ちた。
それから今日まで、
必死だった。
仲間を見つけ、
仕事を見つけ、
居場所を見つけるのに。
必死で、
ろくに周りも見ずに。
もちろん過去など振り返るはずもなく。
前だけを見て来た。
まだまだ母乳を必要とする、母が守らなければならない小さな命を、
千夏は京平に押し付ける形で島を去った。
目的はただ一つ。
楽器店のショーウインドーに貼られていたオーディションだった。
千夏には歌しか武器にできるものがなかった。
京平から離れて後に残るのは歌だけ。
けれどオーディションは一次を通過したものの、
二次で呆気なく落ちた。
それから今日まで、
必死だった。
仲間を見つけ、
仕事を見つけ、
居場所を見つけるのに。
必死で、
ろくに周りも見ずに。
もちろん過去など振り返るはずもなく。
前だけを見て来た。