だから君に歌を
京平。

「お前地元ってこっちなんだよな?こいつの住所は沖縄んなってるし、でもそーだな。沖縄によくありそーな名前かも。お前の先祖、沖縄出身かもな」

無邪気に笑う翔に千夏は上手く言葉を繋ぐことができなかった。

顔の筋肉が強張って笑えない。

「本番まで一時間あるからゆっくり休めよ」

「あ、うん」

翔は特に手紙を受け取った千夏の反応を気にかける風もなく、
楽屋を出て言った。

そして千夏は自分の手を見て呆れた。

手紙を持つ指先が震えていた。

「な、んで…」

封を開けるのが怖い。

中には一体何が書かれているのだろうか。

千夏は誰も見ていないのに隠すようにして封を開けた。

封筒とお揃いの薄いオレンジの便箋が出て来る。
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