だから君に歌を
頭に流れるのは先程読んだ手紙の文章だけ。

「今…は、ただ、驚いて、ます。本当に」

「そうですよねー。これから実感されるんじゃないでしょうか。それでは歌のスタンバイの方、よろしくお願いします」

そう促されてメンバーが立ち上がった。
千夏もそれに続いてステージの方に向かう。

セットの中央に立てられたマイクスタンドを握る手にじんわりと汗が滲んだ。

数台のカメラが一斉に千夏の方へ向いた。

ドクン…

今までにない緊張が千夏を襲った。

どうしよう…。

口の中が渇く。
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