だから君に歌を
結局京平からのファンレターはその一通きりで、
その後送られてくることはなかった。
もちろん千夏が返事を書くこともなければ、
連絡を取ることもなく。
「あ、田中ちゃん、悪いけど銀行寄ってくんない?」
千夏は思い立って車を運転するマネージャーにそう言った。
「ATMでもいいですか?」
「あー。うんいーよ。〇銀行ね」
「ああ、なら近いですよ」
マネージャーは了解すると車の進路を変更し、脇道に逸れた。
「何だよ千夏、おごってくれんのか?」
銀行の駐車場に車を止めてもらい、千夏が銀行で用事を済ませて戻ってくると、
今まで隣で眠っていた晶が片目を開けて言った。
「何でだよ、記帳してきただけだし」
「はぁー?何だそれ。つまんね」
口を尖らせて拗ねた顔をする晶を無視して千夏は通帳を開いた。
通帳にはずらりと10000という数字が並んでいる。
一度も引き落とされたことのないそれは合計金額がかなりの数字になっていた。
千夏が沖縄の家を出てから五年近く、
毎月きっちりと振り込まれるお金がある。
それは京平からの振込みで、金額は一万円。
それは一度も途切れる事なく振り込まれ続けていた。
今月もやはり、一万円の振込み。
その後送られてくることはなかった。
もちろん千夏が返事を書くこともなければ、
連絡を取ることもなく。
「あ、田中ちゃん、悪いけど銀行寄ってくんない?」
千夏は思い立って車を運転するマネージャーにそう言った。
「ATMでもいいですか?」
「あー。うんいーよ。〇銀行ね」
「ああ、なら近いですよ」
マネージャーは了解すると車の進路を変更し、脇道に逸れた。
「何だよ千夏、おごってくれんのか?」
銀行の駐車場に車を止めてもらい、千夏が銀行で用事を済ませて戻ってくると、
今まで隣で眠っていた晶が片目を開けて言った。
「何でだよ、記帳してきただけだし」
「はぁー?何だそれ。つまんね」
口を尖らせて拗ねた顔をする晶を無視して千夏は通帳を開いた。
通帳にはずらりと10000という数字が並んでいる。
一度も引き落とされたことのないそれは合計金額がかなりの数字になっていた。
千夏が沖縄の家を出てから五年近く、
毎月きっちりと振り込まれるお金がある。
それは京平からの振込みで、金額は一万円。
それは一度も途切れる事なく振り込まれ続けていた。
今月もやはり、一万円の振込み。