黒き手が…
眼を閉じ、神経を集中する。

すると二人からゆらり陽炎のように、気が立ち上る。

ロウソクが一気に燃え上がった。

赤き炎が柱となり、部屋に光が満ちる。

そしてゆっくりと開いた二人の眼は、赤く染まっていた。

二人の放つ気と、五つの炎の光は部屋の闇を飲み込み、そして突如消えた。

「…ふぅ」

「う~。今夜はゆっくり眠れそうだよ」

二人はぐったりとした。

ロウソクはすでに影も形も無い。

同じように、黒き手も無くなっていた。
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