俺が大人になった冬
「元くん。お野菜もいっぱい食べてね」
「野菜あんまり好きじゃねぇ」
「そんなことを言わないの」
言いながら彼女は、肉ばかり食べている俺の取り皿に強引に野菜を入れる。
「あ! なにすんだよ!」
「食べてね」
彼女と他愛もない話をしながら、頭の中は複雑な思いでいっぱいになっていた。
昼に会っているときには、全く考えなかったのに、彼女との晩メシが楽しければ楽しいほど、普段の彼女の生活を思い浮かべてしまう。
俺を待っていてくれたように、毎日旦那の帰りを待っているのか?
毎日あんなに嬉しそうに、旦那を出迎えているのか?
そんな顔で毎日旦那に笑いかけているのか?
彼女の日常は旦那の傍にある。
俺とのことは、彼女にとって『非日常』なんだ。