俺が大人になった冬
「出たよ」

涙が上がってきそうなのを悟られないように、タオルでゴシゴシと髪の毛を拭きながら彼女に声を掛ける。

「早かったのね」

彼女は気まずそうに俺に笑い掛ける──とても寂しそうな表情で。

「ストラップ、使ってくれてんだ」

「ええ。もちろん」

言いながら彼女は手に持っていたケータイを少し上げて、俺にストラップを見せた。

嬉しい気持ち。

切ない想い。

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