俺が大人になった冬
そんな余裕の表情がますます悔しくて。

でも、そんなやりとりがなんだかとても愛おしくて。

つい、にやけてしまう顔を咄嗟に毛布で隠す。

「……」

「どうしたの?」

「マジ凹んだ」

このまま少し彼女を困らせようと、わざと落ち込んだ口ぶりでそう言うと、彼女はまんまと俺の嘘に引っかかり

「あ、ごめんなさい」

と慌て始める。

その見事な引っ掛かりぶりがやけに可笑しくて、堪えきれず笑いが漏れた。

「うっそ~! 騙されてやんの!」

俺がゲラゲラと笑い出すと彼女はムッとした顔になり、黙ったかと思ったら突然

「C’est pas gentil」

と、とても日本人とは思えない発音で何語かを発する。
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