俺が大人になった冬
お参りを終えるとそのままどこにも寄らず、行きとは別ルートの多摩川沿いを通り家に向かった。

「なぁ。さっき一生懸命祈ってたけど、たった100円でなにをあんなに頼んでたんだよ?」

「元くんの幸せ」

「絶対嘘だろ!」

俺のツッコミに彼女は小さく笑う。俺もつられて笑う。

「あら?」

ポケットから電話の着信音が流れ出す。

この曲はあいつからの電話だ。

「電話みたいよ?」

「うん」

「出ないの?」

「いいよ別に。家からだから」

「家って? お母さん?」

急にかかってきた家からの電話。

せっかく彼女と楽しい時間を過ごしていたのに、一気に気分が悪くなった。

< 151 / 286 >

この作品をシェア

pagetop