俺が大人になった冬
「女と会うかと思った」
「え? なんで?」
「誕生日だろ? デートとかしねぇの?」
「今日は無理なんだ。でも明日会うし」
ヒサの言うように本当は今日会いたかったけれど、学校を休むことを彼女は嫌がる。水曜日はいつも午後からの授業だから午前中に会おうという話になっていた。
彼女には今日が誕生日であることは言っていない。言えばまた、なにかプレゼントを用意させてしまうだろう。
以前の俺では考えられないことだけれど、彼女が泊まったことと、気持ちを受け入れてくれたことだけで満足だったし、なにより彼女は俺に『安心感』という一番欲しいプレゼントを残してくれていた。
あの日バイトから帰って、風呂に入ろうと思い鏡を見たときに、はじめて俺の胸元に小さな内出血があるのに気がついた。最初それがなんなのか分からなかった。
彼女はあのとき、会えないときも俺が不安にならないように、小さな『しるし』を残してくれたのだ。
服の上からは見えないギリギリの場所につけられた、小さなキスマーク。
それを見るたびあの日のことが蘇り、心が熱くなる。
「え? なんで?」
「誕生日だろ? デートとかしねぇの?」
「今日は無理なんだ。でも明日会うし」
ヒサの言うように本当は今日会いたかったけれど、学校を休むことを彼女は嫌がる。水曜日はいつも午後からの授業だから午前中に会おうという話になっていた。
彼女には今日が誕生日であることは言っていない。言えばまた、なにかプレゼントを用意させてしまうだろう。
以前の俺では考えられないことだけれど、彼女が泊まったことと、気持ちを受け入れてくれたことだけで満足だったし、なにより彼女は俺に『安心感』という一番欲しいプレゼントを残してくれていた。
あの日バイトから帰って、風呂に入ろうと思い鏡を見たときに、はじめて俺の胸元に小さな内出血があるのに気がついた。最初それがなんなのか分からなかった。
彼女はあのとき、会えないときも俺が不安にならないように、小さな『しるし』を残してくれたのだ。
服の上からは見えないギリギリの場所につけられた、小さなキスマーク。
それを見るたびあの日のことが蘇り、心が熱くなる。