俺が大人になった冬
「あのさ。もう離婚とかは考えてねぇの?」

このあいだの話などなかったように、今まで通りに振る舞おうとしている彼女に、我慢しきれず昼メシを食べながら尋ねた。

楽しそうだった彼女の表情が、その一言で一気に曇る。

「もうその話はいいじゃない。せっかく会えたのだから楽しく過ごしたいわ」

「でもさ……俺、心配なんだ。あんたになにかが起こってから後悔したくないんだ」

「心配しないで。主人は手を出すことはしないわ」

「違うよ。あんたの心が壊れちまうだろ」

「……」

「親はこのこと知ってんのかよ」

「知らないわ。言えない」

「なんで?」

「離婚のことはいつも考えているわ。でも、両親に話しても分かってもらえないだろうし、悲しい思いをさせたくないから……私が我慢すればいいことなの」

彼女は旦那から離れることをすっかり諦めている。

いや、旦那の言葉によって強引に押さえ込まれているんだ。
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