俺が大人になった冬
「え?」

思わぬ言葉に鼓動が激しさを増す。

「離婚……できなかったのか?」

「ううん。違うの。話したいことは沢山あるのに、言葉が上手く出てこなくて。ごめんなさい」

彼女のこの言葉を聞くまでのほんの短いあいだに、色々な考えが俺の頭を駆けめぐった。それは見事なまでに、もの凄い勢いで『彼女は旦那に監禁されているのかもしれない』というところまで飛躍していた。

「ビックリさせんなよ」

俺の気が抜けたような声を聞いてか、彼女もホッとしたように

「そうよね」

と言いながらクスクスと小さく笑う声が聞こえた。

2ヶ月ぶりの優しい声。柔らかい笑顔が目に浮かび、彼女への想いが一気に沸き上がる。

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