俺が大人になった冬
「無理すんなって」

「していない」

俺に抱きつく彼女の手に、グッと力が入るのを感じる。

「離婚が決まったからといって、元くんとそういう関係になることを望んではいけないと思っていたの。年も凄く離れているし……それに、余計に辛くなってしまうから……」

俺が嫌なわけではない。

必要ないわけじゃない。

別れが辛くなるから? 

だから彼女は迷っていたのか?

「でも、やっぱり、あなたへの気持ちを抑えることはできないみたい」

おそらく確実に迫って来ている彼女との別れ。

彼女がなんで俺と別れようとしているのか。それが、明日なのか、1ヶ月先なのか、もっと先の話なのかまだ分からない。

でも、彼女は俺のことをちゃんと想ってくれている。

俺のことを。とても強く。

< 248 / 286 >

この作品をシェア

pagetop