俺が大人になった冬
「なんだよ……それ」

彼女はきっと俺のことを考えて、俺から離れようとしている。

「そ、そんなこと言うならさ」

傍にいろよ……

「連絡先ぐらい教えろよ。どうせ今のケータイ番号も使えなくするんだろ」

不覚にも上がってきそうな涙を必死に押さえ込み、軽く笑ってそう言うと、

「そうね」

と、彼女は思わせぶりにふふっと小さく笑った。

「教えろって!」

俺は切ない気持ちを隠すように、無邪気を装って彼女に抱きついてみた。
< 257 / 286 >

この作品をシェア

pagetop