俺が大人になった冬
──「会いたかった」とか「凄く探した」とか「やっと見つけた」とか。そんなことを言いながら、あなたを抱き締めようと思ったけれど、やっぱりそれはやめておく。
そんなことをしたら俺はまた、泣いてしまうから。
ガキ丸出しでたくさん泣いてしまった1年前の俺と同じになりたくないから。
少し大人になったと思わせたいから。
喉まで出かかっている言葉を頑張って飲み込んだ。
まだ俺を想ってくれているって保証はなかったけれど、あなたが空に向けているケータイを見れば分かる。
機種は変わっても、変わらずにつけられているシルバーのストラップ。
揺れる『イルカ』は、きっと今も変わらない気持ちの『証』だから──