俺が大人になった冬
「あ、なにか変な味でもした?」

食べる手を止めて、俯く俺を不思議に思ったのか、彼女に不安げに尋ねられる。

「なんか久しぶりで……こういうの。手作りの物とか、ずっと食べてなかったから……」

ポツリ、ポツリと素直な言葉がこぼれ落ちる。

「一人暮らしだから?」

「いや、その前から……かな。あいつの作る物、食べなくなったの」

「『あいつ』って? お母さんのこと?」

「……うちの親、俺が中3のとき、離婚してんだ」

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