俺が大人になった冬
それからどのくらいの時間が経ったのだろう。
俺の気持ちが落ち着いてから、気を取り直して弁当を食べた。
今まで誰にも見せたことがない情けないところを見られたことで、彼女の顔を見るのがなんだか照れ臭かった。
俺は運転席に座っている彼女の方を見ることができず、窓の外をまっすぐ見ながら、サンドイッチを無言で食べていた。
「あ! あの雲、面白い形ね!」
雰囲気を変えようとしたのか、突然彼女が正面に見える雲を指さす。
「え? どれ?」
「あの大きいの。なんだか魚の形みたい」
「そうかな……俺には恐竜に見えるけど」
「本当ね。確かに恐竜にも見えるわ」
俺の言葉に彼女は楽しそうに笑う。
そんな彼女の笑顔を見て、また俺の心がホッと温かくなるのを感じていた。