俺が大人になった冬
あの日、強引に彼女から奪ったキスは、こんなものではなかった。

彼女と唇が重なった瞬間、心が震えた。

あんな気持ちははじめてだった。

エリナとのキスは性欲を満たすための通過点でしかない。

ここに心はない……

それなのに……

いつもより反応の鈍い俺に痺れを切らしたエリナからの『俺自身』への愛撫が、否応なしに俺の性欲を激しく刺激し、体が興奮で火照り出す。

エリナを抱く手を止めることができない。

限界だ……

頭の中でなにかが弾けた。

回した腕にグッと力がこもる。

体のみを激しく欲し、エリナを乱暴に扱いながら夢中で抱いた。

エリナのことなんて見ていなかった。

エリナを抱きながら、エリナの向こうに彼女の幻を重ね合わせ、心の中で何度も彼女の名前を呼んだ。

会いたい。

彼女に会いたい……

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