俺が大人になった冬
──金。

女を抱いて金をもらうことは、当たり前だと思っていた。

それでいいのだと。

ギリギリの生活費しかもらっていない俺にとって、エリナから金を受け取らないということは、生活に直接影響する。

でも……

気持ちのないセックスが……

体を売るように金をもらうことが……

虚しいことだということに、俺は気付いてしまった。

こんな金……

「これ受け取れない」

俺は急に今までの自分に嫌悪を感じ、逃げるようにベッドから出た。そして、散らばっている服を拾い上げエリナに背を向けて服を着ながら、気付けば唐突に

「エリナさん、もう会うのやめよう」

と、別れ話を切り出していた。
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