俺が大人になった冬
言われてみれば、今までの彼女の行動が分かる気がした。

彼女は自分の『息子』と食事を楽しみたかったんだ。

一緒に買い物に行って服を買ってやったり……

子供のためにかわいい弁当を作ったり……

海に行って弁当を食ったり……

色々な報告を楽しみに聞いたり……

「本当にごめんなさい」

彼女はそう言って、俺に向かって深く頭を下げた。

不思議と怒る気持ちはなくなっていた。怒りよりも、俺のことをそういうふうに考えてしまうほど、この人は18年近くも苦しんできたのだろうと思うと、彼女が哀れで涙が出そうになった。

「……いいよ」

「え?」

「そうじゃなかったら、俺と会いたいって言わなかったってことだろ?」

「……ごめんなさい」

「謝んなよ」

俺は以前彼女がしてくれたように、涙が止まらなくなってしまった彼女を優しく抱き締めた。
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