俺が大人になった冬
12月23日──。
「なんだか、こんなに楽しいクリスマスは、はじめてかもしれないわ」
彼女はデパ地下で買ってきたらしい骨付きの鳥もものローストを皿に移しながら、楽しそうに笑った。
「子供みてぇだな」
あの日以来、彼女は心のつかえが取れたのか俺の前でとても自然体だ。
鼻歌混じりにクリスマスの準備をしている彼女の表情は、とても無邪気で、かわいらしく見える。
今朝いきなり彼女から電話が入った。
前置きもなく、「今日会える? 一緒にクリスマスしましょうよ」と。
クリスマスなんて、今までなんとも思っていなかった。どちらかといえば、クリスマスに託つけて『今夜ヤリます』と言うようにイチャつくカップルや、やたらと浮かれて騒いでる奴らを、馬鹿にしていた。
それなのに今年は、ケータイのカレンダーを見ながら何気なくクリスマスの曜日をチェックして、彼女に会うことを意識している自分がいた。