俺が大人になった冬


クリスマスに彼女が傍にいる喜びを感じながら、頼まれた生クリームの泡立てもそこそこに、彼女の姿を眺めていた。

午前中の温かい日差しが窓から差し込み、優しく彼女を照らしている。彼女の周りだけキラキラしていて、なんだか夢を見ているような錯覚を起こしてしまう。

そんな俺の視線に気付いたのか彼女は急にこちらを向き、

「元くん、ボーっとしていないの。もっと一生懸命泡立てないと」

と、まるで先生のような口調で言った。

「ちゃんと混ぜてるじゃん! つーか、全然泡なんて立たねぇし!」

「気合いが足りないのよ」

「なんだよ……」

思わず舌打ちしながらそう言うと、彼女は

「スネているの?」

言いながら立ち上がってこちらに近付き、中腰で俺を覗き込む。
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