俺が大人になった冬
泣きそうになってしまった彼女の顔。

こんな顔させて、なにやってんだろ俺。

本当は彼女の喜ぶ顔が見たかったのに……

このままでは彼女が帰ってしまうかもしれない。

「ち、違うんだ。ごめん……あんたはなにも悪くないのに」

俺は慌てて謝ると、タンスの引き出しからプレゼントの箱を出して彼女の前に置いた。

「あのさ、これ。俺も用意してて」

「私に!?」

彼女は驚いた顔で俺を見る。

「うん……」

緊張して鼓動が早くなった。

俺の心配をよそに、彼女は満面の笑みでその箱を手に取る。

「嬉しい! 開けてみてもいい?」

ますます緊張が高まり、俺は声も出せず2、3回頷いた。

はじめて選んだプレゼント。気に入ってもらえるだろうか……

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