秘密
「じゃあ、せんぱ……」
ガラガラガラっ
背後からドアが開く音がした。
「あっ、ヨシ君いた〜」
現れたのは、国語担当の中野先生だった。
まだ教師になったばかりの彼女は若い。
それに美人だから、男子生徒からはとても人気がある。
この先生は絶対に先輩のことが好きだ。
他の生徒のことは苗字で呼ぶくせに、先輩だけ‘ヨシ君’と呼ぶ。
「何ですか?」
さっきよりもやわらかい先輩の声。
「ヨシ君のオススメの本、聞きたくて」
「最近入れてもらった本、良かったですよ。その棚です」
先生の後ろにある棚を指差す先輩。
私には教えてくれなかったくせに、先生には教えるんだ。
2人のやりとりを見てれば、嫌でもわかる。
先輩も先生が好きなんだ……。