狐の眠り姫
零の体に銀の風が包み込む。
狐火が、風に散らされて桜のように舞う。
それは忌桜の二つ名の由縁。
「……………っ!!」
彼女の家は、炎に包まれていた。
中に飛び込んで気付いた。
これは、ただの火事ではない。
家中に魔力が満ちていて、気分が悪くなる。
葉を探して炎に構わず進む。
「…よう!」
2階の一室にいたのは、二人の少女だった。
葉のと同じ顔をした少女は、彼女を抱いて、泣いていた。
魔力の源は、この泣いている少女だ。
「葉を放せ。女。」
少女は自分に気付いたのかぼんやりとした表情で振り向く。
「あなたは…誰ですか?」
「ただの妖怪だ。」
そう俺は呟くと、二人の少女を抱え、窓を蹴り飛ばし、地面に飛び降りた。
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