狐の眠り姫
妖怪は、涙を流さない。
それは、体の造りが違うのだと聞いていた。

なのに、俺の瞳から、溢れて、こぼれ落ちる。
頬を伝う。
好きだ。
好きだ。
今更って君は言うだろうか。
でも、こんなに好きで、愛しくて、哀しい。
そうか、これが、恋か。
葉は、じっと俺が泣いているのを見つめて、呟いた。
「か…ないで。」


泣かないで、と彼女は言った。
驚いて、見つめる。
彼女は、静かに、俺に向かって微笑むと、そのまま眠りについた。
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