狐の眠り姫
「…なあ、俺の命、葉の為に使えないのか?」
俺の言葉に、男は一瞬驚いた顔をしたが、うなづいた。
「…狐は、確か数百年の長命種だったな…。前例がないが…、方法は、一つだけある。
彼女の時を百年間止め、魂の損傷を癒すのだ。君の命を使えば、それも可能だろう。」
構わない。と答えると、男は迷ったようだが、最後には承諾した。
俺の二百年分の命を葉に与える為に、四本あった尾は二本に切り落とした。
二百年しか残りの寿命が残らないことを意味するが、そんなことなんて気にならない。
彼女が百年の眠りから覚めたら、また恋をすればいい。
今度は、術なんて使わずに、口説き落としてみせる。
何回だって、言えなかった言葉を言ってやる。
だから、葉、百年後に、また会おう。

END
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