狐の眠り姫
いきなり、口に酸素が飛び込んできた。
荒く呼吸を互いにする。
「うまいな。」
彼の言葉に、葉は頬を染めた。
かっ…と熱くなる。
「久しぶりにこんなに旨い悪霊が喰えた。」
「え?」
葉は、キョトンとしたが、意味を理解すると表情を強張らせた。
「……さいてい。」
「何か言ったか?」
そっぽを向いた。
狐は、特に気にする様子もないようで、それがまた拗ねた気持ちに拍車をかける。
狐は、彼女を興味深く感じていた。
くるくると表情の変化する少女は、自分の忘れてしまった物を大事に抱えていて、…滑稽だ。
だが、このまま別れるのは、実に惜しい。
彼女自身の持つ膨大な霊力。…このままでは他の悪霊や妖怪に喰われてしまうだろう。
人の命は短い。
その間、彼女に付き従うのも一興かと狐は笑った。
側にいるだけでも、自分の霊力は、彼女の影響で高まるであろう。
悪くない。
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