† 黒猫とクラウン †
本人はというと、死を覚悟した目で僕を見ている。

『ご主人。あの者はどうしますか?』

月影も、冷たい目でガーテルを見ている。

司会さえも怒りを乗せた目でガーテルを睨んでいる。

僕は意を決して、こう言った。

《その者の無礼は決して許されることではない》

皆の殺気が強くなった。

《しかし、その者が我を侮辱したのは、まだ我を黒牙の血を引くものと知らなかったから》
殺気が緩み、ガーテルも希望を乗せた目を見せた。

《我の考えでは、ガーテルはそれほど大きな罪を犯したとは思っておらんのだが?》

僕の言葉に、月影が、しかしと切り出してきた。

『ご主人、それでもこの方は罪を犯しました。あなた様を侮辱するのは、普通死刑に値します』
《月影、それは普通の場合であろう?この者は我の正体を知らなかった。知らなかったのだから、しょうがなかろう。しかし、やはり多少の罪はある。よって、我はガーテルの夜の力を5年間封じることにしたいと思うが、どうであろうか?》

皆、僕の意見を聞き入れてくれるのか、それぞれがうなずく。

ガーテルに対する目も、殺気はもう感じられなかった。

月影に目を向けると、

『ご主人がそうおっしゃるなら』

と微笑を返してきてくれた。

《では、ガーテルもそれでよろしいかな?》

ガーテルは死刑ではないと分かり、目に涙を浮かべて

『私めはあなた様になんて失礼なことを・・・・。申し訳ありませんでした!そして、無礼を許していただき、ありがとうございます!』
そう、お礼を言った。



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