色、色々[短編集]




「そろそろ新しいMacに変えたら?」


 私が再び頭を抱えるのを見て、営業さんが苦笑交じりに言った。
 もう古いでしょ、と林を指差す。

 平凡な男に指をさされたなんて林が知ったら、二日くらいは不機嫌になるだろうな。



 ……イケメンで、スマートで、優しくて、モテる。
 かっこいいよ、あんたは。確かにかっこいい。いつだって最先端でいようとするその気持ちも含めてかっこいい。



 ただ、仕事ができない。



 すぐ虹色の円盤を目の前にちらつかせて、すぐに動きが遅くなって、すぐにうーうー唸りだして、時に勝手に電源を落とすくらい、仕事ができない。たまにデータも勝手に壊す。

 

 でも。


「もうちょっと、林で頑張ります」


 はあーっとため息を落として、後ろの電源をポチッと押した。

 目を覚ましたらきっとまた、こいつは涼しい顔して「どうしたの?」なんて言うんだろう。優しい笑顔を向けて「頑張ろうか」なんていうに違いない。


 仕事のできない林だけれど。そこも含めて愛着があるのだ。
 今日は林と会社にお泊りになるだろう。






End

林→Mac(パソコン)擬人化
< 107 / 136 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop