色、色々[短編集]
むくっと体をもう一度起こして、ぐるりと周りを見渡した。
腰を上げて、一歩ずつ柵に近づく私を今、見ているのは空だけだ。
空にとけ込めたらもう、こんな憂鬱な気持ちはなくなるのに、高く高く飛んで空に混ざってしまいたい。
ここから飛び立てばー……。
けれど、柵に手を当てて、そこから見える景色は……。
「ふ」
苦笑が出るほど『地面』だ。
こんなところから飛び立ったって、これ以上は上に行けるはずがなく、見えるのは視界に映るのはただ離れたい場所だけだ。
「ふふ」
なんでそんなことに私は笑って、そして泣いているんだろう。
そう思うのに涙があふれるー……。
空はいつも上にあって私を眺めていて、こんな私を今も笑っているんだろう。
何もしてくれない、ただあるだけ。
空になったらこんなむなしい気持ちはなくなるのだろうか。
鳥になったって広がるのは空じゃない。
そう見えるのは私が鳥よりも下に居て、空だけを見上げているからだ。
高く高く
鳥よりも、飛行機よりも高く飛べたら
空にとけ込めるだろうかー……。
空を手に入れることができる存在だったなら、こんな気持ちにはならないんじゃないだろうか。
こつっと柵に頭を当てて、涙が乾くとすぐ鞄を持って屋上から出た。
これ以上むなしくならないために。
欲しているのに、いつもむなしくなる空から離れるために。
固いアスファルトは、ここがどこだか、いやというほど思い知らせるから。
毎日その繰り返しだ。