色、色々[短編集]



「――頭痛い」


社内のデスクで頭を抱えて1人で小さく呟いた。

今日が土曜日であることだけが幸いだ。特に急ぎの仕事もないからこそ昨日深夜まで飲みに行ったのだけれど……。

何だってこんなにしんどいのだろうか。昨日も散々吐いたというのにまだ胃の中が気持ち悪くて仕方ない……もう出す物は何もないというのに。いくらなんでも飲み過ぎた。


「先輩大丈夫ですか?」


新卒で入ってきたばかりの後輩が私の隣で心配そうに声を掛けてくる。心配してくれるのはありがたいのだけれど……正直今の私に愛想を振りまくことは不可能で。


「ん」


と小さく返事をするのが精一杯だった。

まだ時間は昼過ぎで、私の背後の窓からはまぶしいほどの明かりが気分に反して降り注いでくる。

帰ろうか。そう思いながらも腰を上げるのですら億劫でだらだら二時間ほど机にうつぶせになっている。

仕事がないなら無理して会社に来なければ良かったと今更後悔をする。
いや、それよりも昨日二件目で終われば良かった。あのあと調子に乗って三件目四件目に行った私はなんてバカなんだろう。手遅れな感情。

しかもビールに焼酎にワインに日本酒にバーボン。ちゃんぽんもいいとこだ。悪酔いしなかっただけで幸いだと思う程、無茶をしすぎた。

呼吸をするだけで胃がむかむかとして何かがこみ上げる。

それ以上に今日の予定を考える方が憂鬱。
先週から約束していた飲み会があるっていうのに……。地獄だ。どうやって断ろうか。それ以上にもう何でも良いからベッドに横になりたい。

視界がゆらゆらと揺れる。

未だに体中をアルコールが支配しているのだろうか。ふわふわと未だ夢見心地なそんな気分。
そんな良いものではないけれど。


「――…!」


意を決して根性を振り絞って腰を上げた。


「ごめん、帰るわ」


それだけ告げて、霞む視界の中足を踏み出す。
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