色、色々[短編集]


目の前には見知らぬ男

まるで二人旅

だけど知らない男

会話もなく、二人旅



大学も、夏休みに入った。大学の夏休みなんて、高校時代に比べたら特にわくわくもしない。もともと大学なんて半分くらい遊んでるだけで、勉強を必死にした記憶なんかない。気楽な物だ。


だからこそ、こんな二ヶ月近くの休みを貰ったところで特にすることがなくて困るくらいだ。

友達は実家に帰ったり、彼氏と遊んだり。憎たらしいったら……。


私に彼氏がいればまた違うんでしょうけれど…生憎先月振られたばっかりだ。


「なーにが好きだけど付き合えない、だ」


窓から見える景色を見つめながら、誰にも聞こえないように一人で呟いた。

高校時代から一緒に過ごしていた上に、大学が違っても家は近いから大丈夫だよね!なんて言ってたくせに。

自棄になってバイトを入れてみたけれど、夏休み。みんな暇があるのは一緒でそんなにたくさん入れない。

無駄にお金も貯まったし、家でごろごろしてたって親が煩いし。


『そんなに暇ならおばあちゃんにでも会いに行きなさいよ』


そんな母の言葉に、それもいいかと一週間の一人旅。よくよく考えれば何もないドのつく田舎で一週間も何をすれば良いんだか……。


「暇」


一週間も暇。それ以前に今、電車ですら暇。

隣の県だっていうのに、田舎も田舎。電車を三本乗り継いで、そこから二本まだ乗り継いで、最終的には無人駅になるんだから。

嫌いじゃないけど、1週間、地元の1ヶ月間くらいに感じるんじゃないか、と思うくらい田舎で、時間の流れが遅い。

海と山しかない田舎。向かってる電車だけでもう、すでに暇に思ってるのに1週間も過ごせるのか……先行き心配で仕方ない。


ちょっとした傷心旅行にはいいかもしれないけど。

さすがに、これほど田舎だからか、向かう電車のなかも人は少ない。
窓からの代わり映えのしない景色にも飽きてきた私は、ゆっくりと視線を車内に向けて人間観察を始めた。
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