色、色々[短編集]
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あかりと出会ったのは、大学の時だった。
「授業の選択決めた?」
前の席の女の子が、くるっと振り返って明るい笑顔を向けてきたのが始まり。
「んーまだ。決まった?」
「悩んでてさー、一緒に選ぶ?」
可愛いなと思った。
明るい色の髪の毛は、肩くらいで軽く巻かれていてふわふわ。
春に出会ったからか、明里のイメージは特に春だ。春がとても良く似合う。ピンクが似合う。
小柄な女の子だった。
それからよく明里と共に行動するようになった。
授業が一緒の事も多かったからというのもあるだろうけれど、それ以上に明里といるのは楽しかった。
他の友達だって沢山いたけど。
だけど明里は別格だったんだ。
明るくて、誰とでも友達になれる彼女の事を純粋に好きだと想っていたし、一緒に居る自分を嬉しくも思っていたんだから。
「お前らいっつも一緒だよなー」
「明里と彬、できてんじゃないのー?」
友達にからかわれる度に、二人で「さぁねー」と笑っていた日々。それほど一緒に居たって、2人の関係は“友情”で、だからこそそんなウワサだってどうでもよかった。気にするのもバカらしいほど。
明里に彼氏が出来たってその関係は変わることがなかった。
「お前明里を独り占めすんなよな」
そう明里の彼氏に言われたこともあった。
そのたびに笑って「羨ましいだろー」なんて返していたけれど。
当然自分にも恋人だって出来たし、明里との関係がそれでどうにかなるわけでもなく、互いの恋人との関係になんら支障は出るはずもなく。
上手くやってきたはずなんだ。
このまま一緒にいるんだと互いに思ってたんだ。
ただ一つ気になっていたことはと言えば、少し、明里が彼氏よりも共にいる時間を選んでいたように思った事くらい。
どんな彼氏とも長続きしなかったことくらい。
だけど常に「可愛くなりたい」「痩せたい」「恋したい」「誰かに愛されたい」そう言っていたから。明里はそう言って笑っていたから。だから気にしなかった。
実際には――気にしないように。
小柄な自分を気にしていた明里。小さい癖に大きな胸がコンプレックスだと言っていた。
「それでもいいじゃん」
その胸が明里じゃないのか。
胸がないなんて男になりたいみたいだ。
そんなの明里じゃないし、そんな明里だったらきっと一緒にいなかった。