色、色々[短編集]
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たまにこういう気分になるときがある。
部屋のベランダから外に出て暗闇の中、背筋を伸ばした。
吐く息は真っ白に染まり、ふわふわと舞い上がる。煙草の煙とこんなにも似ているのに、煙草の煙よりも冷たくキレイに感じるのは何故なんだろうか。
そんなどうでもいいことに頭を働かせる。
時計の針はもう既に三時を回っていて、ベランダから見える地上はもう真っ暗だ。所々で車のランプや電灯、そして信号の光が輝いているけれど。
どれもどこか淋しそうで、いつまで光り続ければいいのかと私に問うているようにも思う。そんなはずはないのに。
みんな眠ればいいのに。
真っ黒な世界に落ちてしまえばいいのに。
私も含めて。
くるりと振り返り、部屋の中に視線を移すと無人の部屋が光り輝いていた。
外に見える電灯達と一緒だ。淋しげな部屋。
「あんなに、怒らなくてもいいじゃん…」
小さく呟いてすねたように口を尖らせた。誰も見ていないからこそ。
些細な喧嘩だった。
別にこれで最後というようなそんな喧嘩でもない。
いつもの喧嘩で、いつものように彼が、怒って帰ってしまっただけのこと。
何が原因だったのかと思い返してみても、これと言った大きな出来事があったわけでもない。ちょっと気に触ることを言われた、言った、それだけのこと。
いつもならむすっとしつつも数分後には忘れてしまう程度の事なのに。それが出来なかったのは私の気持ちの問題なのだと思う。
正直なところ八つ当たりだったのかも知れないとも思う。
たまにこういう気分になるときがある。
情緒不安定という言葉で片付けられたら楽なのにと自分でも思う。
生理前のちょっとしたイライラが原因だと、そう言えたらいいのにと思う。実際には生理はちょうど一週間前に終わったばかりだ。そんな理由は通用しない。