色、色々[短編集]
「考えるの、やだなあ」
そう呟いて、寒さに耐えきれなくなりその場で小さく駆け足をしながらポケットに手を突っ込んだ。
ボックスの煙草を取り出して、残り2本の煙草から1本を口に咥える。
煙草も買いに行かなくちゃ。
だけど何もしたくない。
もう楽な格好になってしまっている。今更コンビニ行くのに着替えるのも嫌だし、再び家の中に入ったらもう出たくなんかなくなるだろう。
明日の朝にはきっと買いに行かなくちゃならない。
寒すぎて煙草の味も何も感じなくて、そもそも寒すぎて外にいるのが辛くなる。
半分くらいしかまだすっていない煙草をベランダの灰皿に押しつけて、もったいない気持ちを少しだけ堪えて小さく震えながら部屋の中に入った。
暖かいココアでも飲んだら少しは気が楽になるだろうか。
暖かくしたら余計に、言葉にしにくい感情を忘れて眠ることが出来るだろうか。
キッチンに足を運ぼうとしたとき、机の上に置きっぱなしだった携帯電話がチカチカと光るのが目に入って脚を止めた。
彼氏から……とも思えない。そもそもメールを頻繁にする人でもないし、帰ってからもう二時間以上も経った。もう寝てるに違いない。
そう言い聞かせながらも少しの期待を込めて携帯電話を開く。
彼氏からのメールではないことに「やっぱり」と「がっかり」が入り乱れた。
[起きてる?明後日みんなでご飯食べに行こうと思ってるんだけど、どうー?]
大学時代の友人からのメール。
少し自分の予定を考えてから返信ボタンを押した。
いいよ、そう返事を打ちかけて……だれかと話したいと思い通話に切り替える。
悩みを言いたい訳じゃない。
私はそんな柄じゃない。
悩みを打ち明けようとしたところで、自分でその悩みの原因を上手く言葉にすることができないし。
『もしもしー』
沈んだ気分の私に、友達の明るい声が聞こえて、ほんの少し笑みがこぼれる。
「ごめん、メール打つのめんどくさくて」
私の返事に友達がケラケラと電話越しに笑うのが聞こえた。