色、色々[短編集]

夏は暑くてべとついて嫌い。
海もべたべた、汗もべたべた、誰もと絡みたくない。

涼しい場所で一人余裕で過ごしたい。

*

大学生の夏休みなんてあってもなくてもいつもと大した変わりなんかない。休みであろうと学校であろうと友達と集まって飲んで騒ぐ毎日で勉強なんてそっちのけ。

大学2回生だったらなおさらだ。就職活動ももう少し先の話で大学生活にも慣れ始めた。

楽しめと言わんばかりの状況。
夏休みなんか、毎日の生活よりも少し早い時間から遊べるだけのことだっていうのに。

このクソ暑い中、どうやって遊べと言うのか。屋内で映画鑑賞くらいで充分だって言うのに……。


「ちょっとー朝子!もう少し楽しみなさいよ−!」


私夏は嫌いなの。
何だってこんなくそ暑い中でバーベキューなんてしなきゃいけないの?


「暑い……クーラーが恋しい……最悪扇風機でもいい」


暑い日差しの下で熱い焼き肉を食べる。ビールもぬるくなるし煙草も暑くてなんだか味が分からない。

帽子のツバから溢れた日差しに、目を細めながら煙草を吸った。


「俺にも煙草ちょうだい」


バーベキューをしている場所から少し離れた防波堤の上で、風を感じながら煙草を吸っていると、大和が話しかけてきた。

煙草をくわえたまま無言でセブンスターをひょいっとあげて一本取り出し渡すとお礼も言わずに手に取って、ジッポで煙草に火をつける。


「一人冷めてるなお前は」


煙草を一回吸って吐き出しながら私に、苦笑いにも似た笑みを見せながらそういう大和。


「暑いの嫌いなの」

「集団行動の間違いだろ?」

「大きなお世話よ」


別に集団行動が嫌いな訳なじゃない。
自ら入ったサークルだもの。「スノボサークル」という名前なのに夏にバーベキューって言うのが不思議だけど。
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