色、色々[短編集]


暑さのせいか、行為のせいか体がやけにだるく、重い。


「煙草もらうよ」


机の上にあった大和の煙草を返事を聞かずに手に取って、衣服を身にまとう事もせず、ジッポで火をつける。

オイルの焼ける匂いがこのぬるい空間には異様に感じて、異物が入って来たみたいに感じる。


「終わってすぐに煙草吸うなよな」


そういいながらもそもそと体を起こして、私の手をつかんでそのまま煙草を一息、体に流し込んだ。


「何?このクソ暑い中で腕枕でもして眠ろうって言うの?」

「相変わらず冷めてるなお前は」


苦笑する大和に少し優越感。


「冷めてなんかいないわよ」


冷めれる物なら冷めたいけどね、もう無理みたい。
一度溺れてしまったから。


「私の事好きなの?」


もう一度聞くと、大和はまた笑う。
さっきより少し優しく感じるのは私の気のせい?


「さあ?もっと俺に溺れさせてみたいくらいには」


上等じゃない。


「俺の事好きなくせに、一人涼んだ顔して眺められると、燃えるよな」

「暑苦しいのは嫌いなの、恋に暑くなるのもまっぴら」


だったんだけどね。でももうそんな顔して一人悠々とは過ごせないみたい。


「悔しいから、今度はあんたを私に溺れさせるわ」

「いいね、それ」


生温いキスをもう一度。

あついのは嫌い。一人涼しい場所で、涼しい顔して過ごしたい。
だけど一度溺れてしまった蜜の中、癖になる快楽の蜜の味。

じゃあ今度は悠々とその中で泳いでみせようじゃない。
悠々と泳ぐあんたを捕まえてもがく女をかき分けて、こんどはあんたを私に溺れさせるわ。


べとべと絡んで離さない離れない、あついあつい恋の中



End
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