【短】秘密のサンタクロース
「とにかく保健室とか行く?」


彼の言葉と同時にチャイムが鳴った。
あたしはユマに教室に戻るように言って彼に腕を引っ張られながら歩いた。

――――


『くしゅんっ』


さ、寒い・・・

震える肩を両手でさするけどなかなか温かくならない。

ジャージに着替えたけど・・・やっぱりまだ寒い。


「あ~あ、ごめんな~?」


ものすごく謝るという気持ちがこもってない言葉にカチンと来る。


『あ~あってアンタねぇ・・』


「うわっつめた!」


・・・え?
あったかい?


気がつくと彼はあたしの両手を自分の両手で包み込んでいた。

彼の手はとても温かい。

こんな善意がなさそうな人の手が温かいなんて。


ちょっと驚いた。


「あったかい?」


彼の言葉に目を上げると彼はあたしにとびきりの笑顔を向けていた。

手が温かい上に笑顔まで輝くなんて・・・。

あたしは彼の質問にコクリと小さくうなずいた。


それを見て彼はにこっと笑う。
< 4 / 54 >

この作品をシェア

pagetop