コンコンッ





控えめなノック音のあとに、扉が開く。








「失礼します」







その姿、声、全部が予想通り先生で。







こんなにも近くにいる現実に嬉しさが込み上げてくる。






鼻の奥がツンとして、涙が溢れそうになった。







でもこの涙は



先生に会えた嬉し涙?



それとも……









気持ちを殺してまた別れなければならない悲しみの涙……?









先生は、ベッドの傍まで歩み寄って、ベッドサイドにあった椅子に座った。








沈黙が、痛い。








それをやぶったのは、やっぱり先生で。








「具合、どう?」






優しさを含んだ、柔らかい声。






「大丈夫…です」






「やっと…会えた…」





え?



「先生、責めないの…?」





てっきり怒られるのかとばかり思ってた。





「もちろん、聞きたいことを上げたらきりがないよ。



でも…



何か理由、あるんでしょ?」






どきり、と心臓が波打ったのが分かった。











< 74 / 85 >

この作品をシェア

pagetop