彼の隣、カレのとなり
――がちゃ
突然音がして、驚いて振り返る
カレだ――
仕事が片付いたのだろう、疲れた顔をして、眠たそうに寝室へと入ってきた
私は、今すぐ駆け寄り、カレの疲れを癒してあげたい衝動と、けれど私を放っておくカレに、変な嫉妬心を抱えて、そんな気持ちを紛らわすかのように、窓の外の月に視線を戻した
「絵画みたいだな・・・」
刹那、カレがそう呟いた
もう一度振り向くと、カレは私を、慈愛するような目で見つめていた
「おいで?」
ベッドから伸ばされた手に、私は飛び込んだ
優しく撫でる手に、愛しさが込み上げた
私は、本当に馬鹿だね
自分が猫だとか、カレが人間であるだとか、もうそんなの考えるだけ無駄なのにね
好きなんだから、考えちゃうのはしょうがないけど、でも、カレが振り向かないことを嘆くのは、もう止めにしよう
片想いでも、いいじゃない
身分違いの恋だって、それでもいいじゃない