彼の隣、カレのとなり
カレと初めて出会ったのは、真冬の雪の日
私は、生まれたときから捨て猫だったらしい
自分の親の顔も知らず、ただ私が入っていた箱の中に身を潜めていた
――寒い
食べ物のとり方も、もらい方も知らない私は、目覚めてから一度も食べ物を口にしていなかった
起きて歩く体力もなく、箱の中でただただ寒さを耐えていた
幾多も過ぎていく足音の中、ひとつだけ、私の箱の前に止まった
ゆっくりと目を開けてみると、そこにいたのは、カレだった
カレを見た刹那、今まで感じたことも無い、震え上がるような感動を覚えた
――彼だ
一瞬で分かった
私が彼を、見間違える筈が無かった
――あぁ、愛しい彼だ
残り少ない体力を総動員させて、声を上げた
『ミャー』
ひどく心細い、震えた声だったが、カレには届いた
私を優しく抱き上げ、コートの中に入れる
懐かしいにおいのする温もりに、身体が震え上がった