distance
「今日、桜井が浮かれてたな」


最寄りの駅の改札を出て、家までの道を歩き始めた時、たっくんが言った。


「そうなの?」


「“そうなの?”って…

桃と手をつないだって言って、うちのクラスまでみんなに自慢しにきてたけど?」


「つないだんじゃなくて握手しただけだよ。
それに、あたしと手をつないでも自慢にはならないでしょ」


「でも、みんな羨ましがってたから、なってるんじゃい?」


「ならないよ。百合香様だって、桜井くんを哀れだって言ってたよ」


「哀れ?…なんで」


「なんでって…えーと…
桜井くんは楽しそうにしてた時、あたしは別に楽しくなかったから…?かな?」

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